バルトーク《弦楽のためのディヴェルティメント》|親しみやすい民族リズムと現代音楽が織りなす三楽章の魅力

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今回は20世紀の名作曲家バルトーク・ベーラのとっておきの作品をご紹介します。

「バルトークって、ちょっと難しそうな現代音楽の人でしょ?」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。でも実は、バルトークの作品の中には親しみやすく、美しいメロディと生き生きとしたリズムに満ちた作品もたくさんあるんです。

その中でも、今回は《弦楽のためのディヴェルティメント》という作品をご紹介します。クラシック入門の方にもとてもおすすめできる一曲ですので、ぜひ最後までお付き合いください。

バルトーク・ベーラってどんな作曲家?

まずは簡単に、バルトークについてご紹介します。

バルトーク・ベーラ(1881-1945)はハンガリー出身の作曲家・ピアニスト・民族音楽研究家です。彼はヨーロッパ各地の村を訪ね歩き、現地の人々が歌う民族音楽を採集し、録音し、譜面に書き起こすという地道な活動を行いました。その数、なんと何千曲にも及ぶそうです。

そうした民族音楽の素朴で力強いリズムや旋律を、自身のクラシック作品に巧みに取り入れたことで、20世紀音楽の中でも独自のスタイルを確立しました。

「現代音楽の難しい響き」と「民族音楽の親しみやすさ」を合わせ持った、まさに音楽探検家のような存在と言えるでしょう。

《弦楽のためのディヴェルティメント》について

《弦楽のためのディヴェルティメント(Divertimento for String Orchestra)》は、1939年の夏、スイスの避暑地で作曲されました

この作品は、当時バルトークの友人でありパトロンでもあった指揮者パウル・ザッハーからの委嘱によるもの。ザッハーは、近代音楽の推進者として多くの作曲家に作品を依頼していた人物です。

タイトルにある「ディヴェルティメント」という言葉は、イタリア語で「気晴らしの音楽」「楽しい音楽」という意味。18世紀のモーツァルトなども同じタイトルの作品を書いていますね。

しかし、バルトークの《ディヴェルティメント》は、単なる軽快な音楽というよりも、民族音楽のリズムや旋律を取り入れながら、弦楽合奏の響きの美しさと現代的なハーモニーも楽しめる作品になっています。

曲の構成と聴きどころ

この曲は全3楽章構成です。それぞれの楽章が個性豊かで、短い曲ながら変化に富んだ音楽世界を味わうことができます。

第1楽章 Allegro non troppo

冒頭から明るく親しみやすいメロディが弦の合奏で奏でられます。どこか民族音楽の踊りを思わせるようなリズム感と、弦楽器ならではの軽やかでしなやかな音色が特徴です。ザン!ザン!ザン!ザン!と刻まれるリズムはバルトーク節全開です。

中間部では少し陰りを帯びたメロディも現れますが、すぐに生き生きとしたテーマに戻り、楽しく締めくくられます。

聴きどころ:冒頭のテーマと、弦楽器の掛け合いによるテンポの良い展開。

第2楽章 Molto adagio

第1楽章とは一転して、しっとりとした静寂の世界が広がります。どこか夜の森に迷い込んだような神秘的な雰囲気。バルトーク特有の微妙な不協和音も使われ、緊張感のある美しさがあります。

高音域のヴァイオリンが静かに響く場面や、低音弦のうねるような動きもとても印象的。音の少ない部分にこそ、深い魅力が詰まっています。

聴きどころ:静けさの中に浮かぶ、高音のヴァイオリンの響きと、弦の重なりによる不思議な美しさ。

第3楽章 Allegro assai

フィナーレは、疾走感あふれる明るく勢いのある楽章。民族舞曲のようなリズムと、いたずら心のあるメロディが次々と登場します。途中、一度不穏な空気が漂う場面もありますが、最後は再び元気いっぱいに盛り上がり、陽気に締めくくられるのが魅力です。

聴きどころ:勢いのあるテンポとリズム、そしてユーモアのある展開の妙。

この曲の魅力とおすすめポイント

《弦楽のためのディヴェルティメント》は、現代音楽の複雑さと民族音楽の親しみやすさが絶妙に融合した作品です。

特に、
弦楽合奏のみでこれだけ表情豊かな音楽が生まれる点
難解な部分もありながら、美しい旋律とわかりやすいリズムで楽しめる点
バルトーク作品の中でも特に聴きやすく、入門に最適な一曲

という点が、この曲をおすすめする理由です。

おすすめの名盤

《弦楽のためのディヴェルティメント》を聴いてみよう、と思った方には、まずはYoutube動画をご紹介します。

Bartók: Divertimento for String Orchestra – Janine Jansen – International Chamber Music Festival HD

また、より詳しく聴きたい方には以下の名盤と呼ばれる作品をご紹介します。

フェレンツ・フリッチャイ指揮/ベルリン・フィル(DG)
→ 古典的な名演。しなやかで繊細、そしてバルトークらしい民族的な味わいも感じられる演奏。

イヴァン・フィッシャー指揮/ブダペスト祝祭管弦楽団(Channel Classics)
→ ハンガリーの血を感じる情熱的な演奏。響きも非常にクリアで、入門者にもおすすめの一枚。

パウル・ザッハー指揮/バーゼル室内管弦楽団(Archiv)
→ 作曲者と親交の深かったザッハーによる録音。作品の本来の意図を知る上でも興味深い演奏。

まとめ

《弦楽のためのディヴェルティメント》は、現代音楽の「ちょっと難しそう」というイメージを和らげてくれる、親しみやすくも奥深い作品です。

クラシックの王道から少し外れて、民族音楽の香り漂うバルトークの音楽に触れてみたい方、現代音楽の入り口として何か聴きやすいものを探している方に、ぜひおすすめしたい一曲です。

「現代音楽もこんなに美しく楽しいんだ」と、新しいクラシックの世界を感じてみてください。

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