今回は、知っているとクラシック通と言っても過言ではない、初心者は知らないけど経験者が好きな「本当におすすめしたい」交響曲を紹介します。
「初心者におすすめ」では紹介されない曲ですが、メジャータイトルより聴き応えがあり、私自身は一般的に紹介されている交響曲の入門編より聴きやすいです。また、演奏する側としてもやりがいのある楽しい曲です。
まず初めに伝えたいことは、全楽章を通して聴く必要は全くありません。おすすめポイントから動画が始まるようにするので、そこからしばらく聴いてみて、もう少し聴いてみようかなと思えれば幸いです。
ベートーベン 交響曲第7番
ドイツの作曲家、ベートーベンの交響曲です。ベートーベンは9つの交響曲を作りました。年末にテレビで良く流れてくる第9(交響曲第9番)や、ダダダダーン!と有名な冒頭のリズムから始まる「運命」(交響曲第5番)、英雄(交響曲第3番)や田園(交響曲第6番)と、どれも超有名な交響曲ばかりです。
そんな中、私が7番をおすすめする理由は「これぞクラシック!な雰囲気、リズム感と最後の盛り上がり」です。
各楽章を簡単に印象付けると、1楽章は華やか、2楽章は重苦しい、3楽章はリズミカル、4楽章は派手!です。また、1楽章の冒頭から「THE・クラシック」な雰囲気はありますが、全体を通してリズム感があるので聴きやすいです。
聴いて欲しいポイントは2楽章です。単体でも取り上げられる曲で、ゆったりとしたテンポと短調の重苦しい雰囲気が特徴です。これだけ聴くと良さが分かりづらいですが、各楽器の和音の重なりや、メロディーを弾く楽器の美しさをしっかりと感じられます。
シューマンやワーグナーなどの作曲家も絶賛しました。私がチェロを始めて、初めて合奏した曲がこの2楽章だったので個人的な思い入れもありますが、クラシックをかじり始めた時から好きでいる曲です。
もう1つ聴いて欲しいのは、3楽章から4楽章への流れです。通常、各楽章ごとに演奏がとまり、仕切り直して次の楽章の演奏を始めます。しかし、第7番の3楽章から4楽章は続けて演奏されます。
3楽章の後半は異様なまでに静かで、何かはじまりそうな雰囲気でティンパニがリズムを刻みます。バイオリンが転調を繰り返しながら管楽器も和音でクレッシェンドし、頂点で華々しく4楽章がはじまります。
ドヴォルザーク 交響曲第7番
チェコの作曲家、ドヴォルザークの交響曲です。ドヴォルザークの交響曲では、第9番の「新世界」やトランペットが象徴的な第8番が有名です。交響曲第7番は何故あまり知られていないのか、それはドヴォルザークの交響曲の中でも群を抜いて演奏が難しいからです。
私の在籍していた学生オーケストラでプログラムとして取り上げた時、プロのバイオリニストが「難しくてプロでもあまりやらないから、是非演奏させて欲しい」と名乗り出るほどでした。
この曲は、弦楽器が休まず演奏していて音が濃い!管楽器がフォルテで吹くと弦楽器が束になってもかなわないなか、ドヴォルザークはひたすら弦楽器に弾かせています。楽譜が音符で埋まっていてとにかく弾きっぱなし!管楽器が大きく鳴らすので聞こえないと思いきや、弦楽器がないとスカスカな曲になります。
ドヴォルザーク自身が「1小節も無駄にしなかった」と言っているように、とにかく密度の濃い曲です。いろんな楽器がいろいろやっていて、それでいて曲がまとまっているのに感動ですね。
私は3楽章がおすすめです。ドヴォルザークの「スラブ舞曲」はチェコなど東欧~中央ヨーロッパの民族的な曲作りが特徴的で、それが色濃く表されているのが3楽章です。動画は3楽章から再生されるようになっているので、聴いてみてください。
メンデルスゾーン交響曲第5番「宗教改革」
ドイツの作曲家、メンデルスゾーンの交響曲です。メンデルスゾーンの交響曲は第3番「スコットランド」、第4番「イタリア」と有名です。哀愁を感じる第3番、弾けるような明るさの第4番と違い、第5番は重苦しく、荘厳な印象の曲です。
おすすめポイントの1つ目は、1楽章冒頭です。弦楽器が和音で上昇音階を演奏します。私の中では、「世界一美しい上昇音階」だと思ってます。音がたった5個高くなっていくだけで、キラキラとした光を感じます。
この上昇音階は、賛美歌「ドレスデン・アーメン」の一部をモチーフにしています。下に比較動画を載せるので聴き比べてみてください。
この「ドレスデン・アーメン」はその後、ワーグナー、マーラーにも使われるとても有名な賛美歌です。
2つ目のおすすめポイントは4楽章です。1~3楽章は短調で重苦しくですが、全ては4楽章のフルートソロの為にあります。苦しく長い冬を乗り越え、ようやく暖かな春になったような、優しく美しいメロディーは感動します。
この交響曲は実際には2番目に作曲されたものですが、演奏会ギリギリまで作曲にかかってしまったため演奏されず、メンデルスゾーンの死後に出版されたため「第5番」となってしまいました。
メンデルスゾーン自身はこの交響曲を好きではなく何度も書き直していたとされていますが、美しいメロディーは後世に残る名作です。
下の動画は「ドレスデン・アーメン」です。
こちらは交響曲第5番の4楽章から始まります。
フランク 交響曲二短調
フランスの作曲家、フランクの交響曲です。この「交響曲二短調」は19世紀後半における最も重要な交響曲の1つと言われています。ベルリオーズが作曲した「幻想交響曲」とともに、フランスの交響曲として高く評価されてもいます。この交響曲は循環形式といって、同じフレーズを各楽章でいろんな形で出てくる曲です。
1楽章で出てくる主のメロディーは怪しい雰囲気で、2楽章にも引き続き出てきます。ただ暗いだけの交響曲かと思っていると、弦楽器の刻みが大音量で始まる3楽章になると別のメロディーが出てきて、このメロディーが広大なイメージを感じさせるのびのびとしたフレーズで開放される感じです。
3楽章の冒頭はやや耳にうるさい感じもしますが、オルガニストだったフランクがオルガンをイメージした通りの音のように感じます。
チャイコフスキー交響曲第5番
ロシアの作曲家、チャイコフスキーの交響曲です。チャイコフスキーは6つの交響曲を作っており、どれも人気のある凄い作曲家です。また、交響曲以外でも有名な曲は多く「序曲 1812年」や「弦楽四重奏曲第1番」は別のページで紹介しています。
この曲は、全ての作曲家の交響曲の中でもきっと1番の人気だと思います。美しいメロディーと鳥肌が立つような盛り上がる曲を書かせたらチャイコフスキーに勝てる作曲家はいない!と言い切れる位、抜群のセンスです。
とりわけ、おすすめポイントは2楽章で流れるメロディーです。曲は弦楽器の和音進行を伴走にホルンが奏でます。おすすめはその後、チェロが同じメロディーを演奏している裏でオーボエが別のメロディーで絡んできます。
チェロの高音域は、低音域とは違い切なさを感じさせる音が特徴的で、音が跳躍する時のふわっとした感じと相まって心を揺さぶります。また、オーボエの中音域は力強さと懐かしさを感じさせるので、この2つの楽器でメインとサブのような形にしたチャイコフスキーは、楽器の特性をとても理解していると感じます。
また、チェロの音階が下がればオーボエが上がり、チェロが上がればオーボエが下がるといった楽器同士の絡み方がたまらないです!
2楽章の一部分を切り取ってもこれだけ言いたいです(笑)下の動画は2楽章から始まります。
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