今回は、学生オーケストラにおすすめの選曲・中プロ、サブメイン曲を紹介します。
演奏会は通常、序曲のような10分程度の短い曲、20分程度のサブ曲、休憩を挟んで30〜50分程度のメインとなる交響曲と構成されます。
決まりがある訳ではないので、交響曲を2曲演奏する演奏会や、小曲を何曲も演奏した後に交響曲、協奏曲と交響曲など、様々なパターンがあります。
ただ、人数に制限があり、万遍なく出番を用意する必要がある学生オーケストラにとっては、サブ曲でうまく調整する必要があるため、選曲がとても大事な部分です。
今回は、編成で重要な「ハープ無し」の楽曲をチョイスしました。
また、細かい編成と、難易度、知名度、演奏時間を分かるようご紹介していきます。
「ペール・ギュント」第1組曲:グリーグ
編成:Fl: 2, Picc: 1, Ob: 2, Cl: 2, Fg: 2, Hr: 4, Tp: 2, Tb: 3, Tub: 1,Timp: 1, Cym: 1, BD: 1,
難易度:★★☆☆☆
知名度:★★★★★
演奏時間:15分
ヘンリック・イプセンの戯曲『ペール・ギュント』のためにグリーグが作曲した劇付随音楽で、それを。
とてもオススメのサブメイン曲です。編成面で言うと、標準的な人数、楽器です。金管楽器ではトロンボーン、チューバの手番があるのも助かります。
知名度で言えば、第1曲の「朝」は誰もが聴いたことのある清々しいフルートのメロディーで、聴衆を惹きつけます。
また、第4曲の「山の魔王の宮殿にて」は、タイトルこそあまり知られてませんが、CMなどで使われる事が多く、最近ではDOCOMOのCMでも使われています。↓の動画。
難易度と言えば第1曲「朝」のフルート、難しいフレーズはありませんが、いきなりメロディーで始まるので緊張すると思います。
ただ、その他これと言って難しいポイントは見当たりません。初心者が2年目の演奏会でものる事が出来る優しい曲です。
組曲「カレリア」:シベリウス
編成:Fl: 2, Picc: 1, Ob: 2, Cl: 2, Fg: 2, Hr: 4, Tp: 3, Tb: 3, Tub: 1,Timp: 1, Trg: 1, BD: 1,タンブリン
難易度:★★★☆☆
知名度:★★☆☆☆
演奏時間:16分
シベリウスが新婚旅行で行ったフィンランドの「カレリア地方」からインスピレーションを得て作曲した音楽です。
もともとは、劇音楽として序曲や声楽を含めた全10曲で初演されましたが、あまり評判がよくなかったため、現在は序曲を含めた3曲の組曲が一般的になっています。
カレリア共和国はフィンランドとロシアに挟まれた国で、首都サンクトペテルブルクは「北欧のヴェニス」と呼ばれる水の都です。
世界三大美術館の「エルミタージュ美術館」や、ロシア装飾建築の最高傑作とも呼ばれる「血の上の救世主教会」、世界遺産にも登録されている「ペテルゴフ」など、美しい街並と自然が素晴らしい場所です。
都市の雰囲気漂う曲調で、いかにもシベリウスらしい作品です。
第2曲のバラード終盤、イングリッシュホルンの見せ場がやってきます。物悲しい雰囲気のメロディーをソロで約1分30秒くらい演奏することになりますので、選曲の際には要確認です!
ちなみに、このイングリッシュホルンのソロが日本の歌「春の小川」にそっくりなんです。
組曲「仮面舞踏会」:ハチャトゥリアン
Fl: 2, Picc: (1), Ob: 2, Cl: 2, Fg: 2, Hr: 4, Tp: 2, Tb: 3, Tub: 1,Timp: 1, Cym: 1, BD: 1, SD: 1,グロッケンシュピーゲル
難易度:★★★☆☆
知名度:★★★☆☆
演奏時間:18分
ハチャトゥリアンはロシアの作曲家です。
フィギュアスケートの浅田真央選手がフリー演技ね際に使用した事で知名度がグッと上がりました。派手で劇的な曲なのでお客さんのウケも良い曲です。
ロシアの文豪ミハイル・レールモントフの同名の戯曲を基に作曲された劇音楽を、5曲に編成したものが今回紹介する組曲です。
ソチオリンピックの際、チャイコフスキーやボロディン、ストラヴィンスキーと並んでこの曲も使用されており、人気のある曲です。
基本的にワルツなので、ズンチャッチャです。2曲目のノクターンはオケの伴奏を伴い終始コンマスが1人でメロディーを弾きます。テンポはゆっくりで、ハイトーンもないので、しっかり練習すれば大丈夫です。
3曲目はチェロが少し美味しいで、可愛らしい曲調でとても好きです。ロシアっぽくない、アメリカを感じさせる明るい曲調です。ちょいちょい木管楽器の短いソロがありますが、まず問題ありません。
問題は4曲目、トランペットの物憂げなメロディーがあります。パーン!とした音ではなくしっとりとした音色が必要なので、結構ここがネックかも知れません。
5曲目はテンポが揺れて、ちょっと不協和音に聴こえる部分が面白い、ハチャトゥリアンの真骨頂のような曲ですね。
ちなみに、運動会で必ず耳にする曲「剣の舞」は、ハチャトゥリアンが作曲したバレエ音楽「ガイーヌ」の中の1曲です。派手でダイナミックな曲調が心地良いですね。
「絵のような風景」:マスネ
編成:Fl: 2, Picc: (1), Ob: 2, Cl: 2, Fg: 2, Hr: 4, Tp: 4, Tb: 3,Timp: 1, Cym: 1, Trg: 1, BD: 1, SD: 1
難易度:★★★★☆
知名度:★☆☆☆☆
演奏時間:16分
マスネはフランスの作曲家です。有名な作品はオペラ「タイス」の中の間奏曲「タイスの瞑想曲」です。
この曲の選曲に関しては、チェロが2曲目を弾きます!と宣言したらやれる曲です(4曲目の最後は弾けなくてもなんとかなる!)。古典的でもあり、最近の映画音楽にも使われそうなドラマティックな曲目が多く、個人的には今回紹介した中で一番演奏したい曲です。
マスネは管弦楽曲用に7つの作品を作り、全ての組曲の副題に「〜のような風景」をつけており、4曲目のこの組曲は「絵のような風景」と言う副題を添えて発表されました。
フランスの作曲家と言えば、ドビュッシー、フォーレのようなフワッとした印象の曲を想像しますが、マスネはメロディアスで形式がハッキリしているので演奏しやすいです。
ハイドンの主題による変奏曲:ブラームス
編成:Fl: 2, Picc: 1, Ob: 2, Cl: 2, Fg: 2, Cfg: 1, Hr: 4, Tp: 2,Timp: 1, Trg: 1
難易度:★★★★☆
知名度:★★☆☆☆
演奏時間:17分
ハイドン作と書かれた楽譜の2楽章「聖アントニウスのコラール」と題された曲のメロディーを変奏曲にした作品です。
変奏曲は冒頭から主題が演奏され、8つのさまざまな変奏がされたのち、終曲で華々しく終わります。ブラームスらしい重厚ながらも明るいメロディーで人気の曲です。
作曲された当時は原曲がハイドン作曲と思われていたので「ハイドンの主題による変奏曲」と呼ばれていますが、その後の研究で実はハイドン作曲では無かった事が分かっています。ただ、その名で定着しているので、今でも変わらないです。
第1変奏の後半部分の弦楽器はブラームス交響曲第2番4楽章の冒頭に、第3変奏の木管楽器は交響曲第4番4楽章に、第7変奏は大学祝典序曲の中間部にも聴こえ、随所にブラームスらしさを感じます。
明るく優雅なメロディーがブラームスの手によって素晴らしい変奏曲になっていて、この曲だけで充分ブラームスを味わえる素晴らしい曲です、やっぱブラームスはスゴい!
いかがでしたでしょうか。学生オケには様々な制約があり、楽曲の知識も限られているので、少しでも選曲の参考になれば幸いです。
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