五重奏曲には様々な編成があり、弦楽器だけもあれば、木管、金管、ピアノ入りまであり、バリエーションがとても豊かで四重奏曲から1人増えただけで一気に雰囲気が変わります。
今回は、そんな個性豊かな五重奏曲をご紹介していきます。
モーツァルト:クラリネット五重奏曲
この曲が作曲された1789年当時、まだ新しい楽器だったクラリネットのために書かれた五重奏曲です。いまではメジャーなクラリネットも、この曲のお陰で楽器の可能性を世に広めたと言われるほどで、歌うようなメロディーの奏で方やバイオリンからチェロまでの幅広い音域と組み合わせる事が出来るクラリネットの特徴を存分に発揮した曲です。
弦楽四重奏にクラリネットが組み合わされた編成です。チェロ奏者とすると、弦楽器以外の楽器が組み合わされた五重奏曲で重要なのは、弦楽器との「融和」だと思います。
楽器の特徴を表しながらも、溶け込んでいるかが五重奏曲のポイントで、溶け合っていなければ協奏曲と言えると思います。
そうした意味で言うと、まだ発展途上の楽器だったクラリネットをここまで活用し、弦楽四重奏と融合させて後世まで五重奏曲の代表作とまで言わせるモーツァルトは、やはり只者ではないですね。
古典的な曲調の中に、メロディアスなクラリネットが上手く融合していて、とても気持ちの良い曲です。
ブラームス:クラリネット五重奏曲
ブラームスの晩年の代表作と言われるこの楽曲は、モーツァルトのクラリネット五重奏曲から約100年経った1891年に作曲されました。
この曲を知ったきっかけは四楽章のチェロのメロディーが美しくて、ブラームスらしい物悲しさが良いなと思っていましたが、全体を聴いてビックリ!クラリネットが美しいじゃないですか!
一楽章の冒頭からこの曲は美しいです。バイオリン2人の冷たい音色の後、クラリネットが暖かい音色で奏でる上昇音階までのホンの20秒程度でグッと引き込まれます。
短調の寂しげな雰囲気とは相反して、優しく暖かな音色が特徴のクラリネットが弦楽器と上手くマッチしていて、とても素晴らしいです。
他の管楽器と比べて音量の調整が易しいのも弦楽器との相性が良い点かも知れません。
シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」
バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、そしてピアノとやや変わった編成の五重奏曲です。コントラバスがいる分、どっしりとした印象を受けます。また、ピアノがメロディーだけでなぬ伴奏も行うので、5人だけで演奏しているとは思えない音の広がりがこの曲の最大の特徴と言えます。
全五楽章の中でもとりわけ有名なのは四楽章。もともと、歌曲として作られた「ます」のメロディーを四楽章で変奏曲としてアレンジされ、五重奏曲自体を「ます」と呼ばれるようになりました。
水の流れのように緩やかなメロディーと、魚飛び跳ねるような軽快なピアノの伴奏がとても優雅です。CMなどで使われていたので、一度は聴いたことがある曲だと思います。
フォーレ:ピアノ五重奏曲第2番
フォーレ晩年の代表作です。弦楽四重奏にピアノという編成の曲で、随所にフォーレらしい曲調が出てきます。
「ペレアスとメリザンド」、「マスクとベルガマスク」など、フォーレと言えばふわっとした曲調で、やや掴みどころの無い雰囲気が神秘的で魅力的な部分だと思います。
個人的には古典が好きなので、弾いていてもなんとかくしっくりこないフォーレは敬遠していました(笑)この五重奏曲はオーケストラ曲や室内楽と比べて構成人数が少ないので各パートが絡む様子が良く掴めるので、フォーレの良さを感じながら各パートの動きや良さを楽しめました。
1楽章の冒頭、ビオラのメロディーがいかにもフォーレらしい、とにかく美しいの一言です。個人的には3楽章の激しく悲しげなメロディーがおすすめですね。
ドヴォルザーク:弦楽五重奏曲第2番
弦楽四重奏にコントラバスの入った編成の五重奏曲です。同時期に作曲されたものが、スラブ風の曲調が色濃く現れた交響曲第5番や、弦楽セレナーデは3大セレナーデの1つに数えられるなど、ドヴォルザークらしさが現れてきた時に作曲されたものです。
ドヴォルザークの弦楽曲で有名なのは、弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」で、この後に作曲された弦楽五重奏曲第3番も「アメリカ」の雰囲気を漂わせた曲で人気もありますが、私は2番の泥臭くも随所にドヴォルザークらしさを感じられるところが好きです。
シューベルト:弦楽五重奏曲
ドイツの作曲家、シューベルトの弦楽五重奏曲です。個人的に、あらゆるクラシック曲の中で1番と言える好きな曲です。弦楽四重奏にチェロを加えた編成となっており、弦楽四重奏曲と比べて低音部や内声部の深みが増しています。
全体は50分近い曲でとてもボリュームがあります。チェリストなのでやや贔屓しているかも知れません。
厳格なクラシックと言った雰囲気の曲なので、クラシックを日常的に聴かない方にはいきなり全部を聴くのは苦痛だと思います。
その中でも、1楽章は比較的馴染みやすいと思います。全体的に冷たい感じのバイオリンに対して、第2チェロのピチカートや伴奏が暖かみを生み出し、この五重奏ならではのチェロの良さが味わえます。
2楽章はゆっくりとした悲しげな楽章です。ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の名誉指揮者「カール・ベーム」の葬儀に使われました。人生を振り返るように、落ち着いた時もあれば、激しい時もあった、悲しみも経験して、最期は安らかに幕をとじる。そんな印象を与えてくれます。
古典の作品の境地とも言える、完成された作品だと思います。ここから先は、ロマン派と言われるメロディアスで型にはまらない大きな曲へと時代が変わって行きます。古き良き時代の代表作として、是非聴いて欲しいです。
いかがでしたでしょうか。
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