「クラシックは難しい」と思われる理由のひとつに「現代音楽」が挙げられると思います。わけの分からないメロディー、耳に痛い不協和音、正直私も好きなジャンルではありません。
ただ、聴いていて面白く感じることはあります。ではなぜこのような音楽が生まれたのか、クラシックの歴史を振り返り、どう聴けば良いのか、曲と共にひも解いていきます。
現代音楽とは
「現代音楽」とは、主に20世紀以降に作曲されたクラシック音楽で、特徴は「無調」と「不協和音の多用」です。では、なぜこのような分かりにくい音楽が生まれたのか、クラシックの歴史からひも解いていきます。
クラシック音楽は時代によって曲の雰囲気を大まかに分類する事が出来ます。「バロック音楽」→「古典派音楽」→「ロマン派音楽」と移り変わってきました。ロマン派音楽まではドミソなどの和音や、ドレミファソラシドのような調性のルールに則って作曲されてきました。
調性や和音がある曲は、意識していなくても聴く人が自然と次にくる音のイメージが沸き、その通り来ると心地よく感じます。これは、人が生まれてから自然と触れ合う音楽に影響されるので、自然と身についています。
一方、現代音楽はそういった「和音」や「調性」などのルールに縛られないやり方で作曲する、新たな技法で生み出された音楽なのです。なので、自分が思った通りに音楽が進まなかったり、予期せぬところで聴きなじみの無い和音が出て来たりとモヤモヤがつのり、結果的に「不快」になってしまいます。
これが、「現代音楽」が敬遠される大きな理由です。
なぜ現代音楽が生まれたのか
では、なぜ「不快」と思える音楽が生まれてきたのでしょうか。
ロマン派までの音楽は先ほどご説明したとおり、聴いていて自然と心地よいと感じる「ルール」に則って作曲されてきました。
そういった曲の大部分は、始まりから終わりまで流れるように進む曲です。ところどころ聴いていて「おかしいな」と思う部分があったり、つまらないなと思ったりする部分はあっても、耳障りではないです。
このように、流れるように進むロマン派までの音楽を別の表現をすると「水平方向の響き」と言います。この「水平方向の響き」に対して、現代音楽は「垂直方向の響き」を意識した音楽です。
では、「垂直方向の響き」とはどういったものなのでしょうか。ひとつ例を挙げてみます。
あるピアニストが「ドレミファソラシ」と順番に弾いたら、次は何が来るとイメージしますか。もちろん、大抵の人は「ド」が来ると思います。「ド」から順番に上昇してきたのだから、とりあえず「ド」だろうと。
では、これが「ドレミファソラシ」のあとに、「レ」が来たらどうですか?耳障りとまではいかないですが、ちょっと予想を裏切られた感覚になると思います。
「垂直方向の響き」は、まさにこの「レ」の感覚を意図的に聴く人に感じさせる音楽の事です。ある意味、驚きや新鮮な印象を与えてくれます。この感覚を聴く人にもっと感じさせたい、表現したいと作曲家達が進んでいった先が「現代音楽」だったのです。
では、どのように聴けば良いのでしょうか。
意識しすぎてはいけない
冒頭に紹介したのは、オーストリアの作曲家シェーンベルク(1874~1951年)が作曲した「室内交響曲第1番」という曲です。
シェーンベルクは現代音楽を代表する作曲家で、「十二音技法」という現代音楽の中の1つのルールを生み出した人です。
「十二音技法」は分かりやすく言うと、ピアノの1オクターブの中にある白い鍵盤「ドレミファソラシ」と半音の黒い鍵盤5個を全て使って作曲するやり方です。
シェーンベルクはロマン派の作曲家「ブラームス」に憧れており、この曲が作られた当時はまだロマン派の雰囲気を感じさせる部分があったと言われています。
しかし、「室内交響曲第1番」は通常の交響曲とは異なり弦楽器より管楽器の多い編成や、調性を感じさせない不思議な響きに「十二音技法」の片鱗を感じます。
シェーンベルクは、調性に縛られない新たな音楽を生み出したのです。なので、今までの音楽と同じように聴いてはいけません。むしろ、どんな不協和音が出てくるのか、どんなインパクトを与えてくれるのか、「流れを掴む」のではなく、「鳴っている音を感じる」事が大切です。
そして、この考えの先に生まれたのがBGM(バックグラウンドミュージック)なのです。演奏会やサロンなど人が集まる場で演奏される事を目的として作られてきたクラシックが、「意識されない」音楽の世界を開いた瞬間だと言えます。
ここで最後にもう一度、冒頭に聴いて頂いた同じ曲を載せます。今回は演奏されていることを意識せず、別の事をしながら音楽を流してみてください。
もし、ふと気になる瞬間や興味をそそる音が出てくれば、それだけで十分「現代音楽」を理解したことになります。
いかがでしたでしょうか。成り立ちや意味を理解してもなお、聴きたくないという人は多いと思います。私自身も、なかなか気が進まない分野ではありますが、新鮮な響きや何度聴いても飽きない音楽で面白いジャンルだと感じています。
まずは、現代音楽がどのようにして生まれ、どう向き合えば良いのか理解頂ければ幸いです。
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