ジャズとクラシックの融合!ジョージ・ガーシュウィンの名曲を紹介します!

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ジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin/1898-1937)はアメリカの作曲家です。

クラシック音楽とジャズなどのポピュラー音楽の両面で活躍した、アメリカ音楽を作り上げた人物として有名です。

今回は、そんなガーシュウィンを名曲とともに紹介していきます。

ガーシュウィンの経歴

ジョージ・ガーシュウィンは1898年9月26日にアメリカのニューヨーク州ブルックリンに4兄弟の次男として誕生します。

両親は長男アイラのためにピアノを買いましたが、のめり込んだのはジョージでした。12歳という音楽家としては遅いスタートでしたが、型にはまらない音楽を生み出す事になるジョージにとっては、むしろラッキーな事だったかも知れません。

15歳になると、ブロードウェイのミュージカルに関係する音楽会社が集まっていた「ティン・パン・アレー」と呼ばれる地区で働き、楽譜の試奏をしながら音楽の才能を伸ばしていきました。

21歳の時(1919年)、ガーシュウィンがアーヴィング・シーザーと共作した作品「スワニー」が大ヒットし、一躍有名な作曲家の仲間入りをします。

それ以降、ガーシュウィンは作曲家として、兄のアイラを作詞家として、二人三脚で数々のポピュラーソングを残していきます。

また、クラシック音楽家としては「ラプソディー・イン・ブルー」、「パリのアメリカ人」、「ポーギーとベス」などジャズが色濃いガーシュウィンらしいクラシック音楽の傑作を残しました。

ガーシュウィンはさらなる音楽への理解を深めるため、同時代の有名な作曲家に学ぼうとしました。

「ボレロ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」、「マ・メール・ロワ」などで有名なフランスの作曲家ラヴェルはガーシュウィンに対し、「you might lose that great melodic spontaneity and write bad Ravel」(君は偉大で自然なメロディを失い、悪いラヴェルを作曲するかも知れない)と伝え、ガーシュウィンの素晴らしい才能を伸ばすよう表現したと言われています。

また、「春の祭典」や「火の鳥」などで有名なロシアの作曲家ストラヴィンスキーは「君のほうが稼いでいるのだから、教えてもらいたいくらいだよ」と言ったといわれています。ただ、後にこのエピソードについて本人は否定したそうですが「そのような事があったら、楽しかっただろうな」と回答したようで、あながち嘘とも言えない感じですね。

ガーシュウィンは脳腫瘍により、38歳の若さでこの世を去ります。生涯で500曲にも及ぶ歌曲や、ミュージカル、映画音楽などを手掛けたアメリカを代表する作曲家として活躍しました。

ガーシュウィンの名曲紹介~クラシック~

それではガーシュウィンの有名な曲の中から、比較的クラシック寄りな曲を紹介します♪

“Rhapsody in Blue”

ガーシュウィンと言ったらこの曲、「ラプソディ・イン・ブルー」が一番有名ですね。

「ラプソディ」とは自由な形で作られた音楽で、聴いてみると分かりますが一般的にイメージするクラシック音楽と比べてかなりラフな感じですね。また、「ブルー」は青いという意味ではなく、悲しみ、さみしさなどの「ブルース調の」といった意味合いがあり、要約すると「ブルース調の自由なクラシック音楽」といったイメージで作られた曲です。

この曲にはたくさんのエピソードがあります。冒頭のクラリネットの演奏は、楽団員がふざけて吹いたものをガーシュウィンが気に入り採用したと言われており、いまではこの曲の代名詞になっていますね。また、初演では自身が演奏するピアノの楽譜が間に合わなかったために自らがアドリブで演奏したと言われています。そんな曲調から「シンフォニック・ジャズ」と名付けられ、ガーシュウィンは高い評価を得ることになりました。

また、大成功を収めたこの初演を聴きに来ていた中に、作曲家のストラヴィンスキー(春の祭典、火の鳥など)、ラフマニノフ(交響曲第2番、ピアノ協奏曲第2番など)、ヴァイオリニストで作曲家のクライスラー(愛の喜び、愛の悲しみなど)、ヴァイオリニストのハイフェッツなどなど超豪華な顔ぶれが聴きに来ていました。

数々の動画があがっていますが、ピアニスト・ランランさんの演奏の自由で弾むような演奏が私は大好きなので紹介させていただきます。

Lang Lang: George Gershwin – Rhapsody in Blue

“An American in Paris”

日本語訳で「パリのアメリカ人」と呼ばれるガーシュウィン作曲の交響詩です。先ほど紹介したラプソディ・イン・ブルー同様、シンフォニックジャズとして知られています。

一時期、休養のためにパリで過ごしていたガーシュウィンは、その時のパリの活気に触発されこの曲を作りました。都会の生活感や街の喧騒などを音楽で表現した音楽になっています。

作曲家は旅で訪れた先の印象を曲にすることが多く、有名なところでいうとモーツァルトは人生の3分の1を旅先で過ごしたと言われ、交響曲第31番「パリ」や「フルートとハープのための協奏曲」を作曲しています。

ほかにもメンデルスゾーン交響曲第4番「イタリア」や「フィンガルの洞窟」、チャイコフスキー「イタリア奇想曲」や「フィレンツェの思い出」、サンサーンスの「アルジェリア組曲」やピアノ協奏曲第5番「エジプト風」、ベルリオーズ交響詩「イタリアのハロルド」などなど。異国の地から新たなインスピレーションを受けることが多いのでしょう。

クラシック音楽には珍しく、比較的新しい楽器とされているサックスが登場したり、様々な打楽器が使われており聴きやすく楽しい曲となっています。

Gershwin: An American in Paris ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Andrés Orozco-Estrada

“Summertime”

この曲はジャズの名曲としてご存じの方もいると思います。1935年に作られたガーシュウィンの代表的なオペラ「ポーギーとベス」の中の1曲で、生まれたばかりの子供に向けて歌われた曲です。

「ポーギーとベス」は貧しい黒人の物語で、とても切ないメロディーの曲は貧困で苦しんでいるけど大丈夫と呼びかける前半部分と、子供の成長を祈る母親の気持ちが歌われています。

このオペラは、ガーシュウィンがデュボーズ・ヘイワードの小説『ポーギー』を読みオペラ化を望んだとされています。小説『ポーギー』のあらすじは以下の通りです。

舞台は1920年代初頭の、アメリカ南東部は南カロライナ州の黒人貧民窟。足が不自由な心優しい物乞いのポーギーと、麻薬と縁が切れない奔放な娼婦ベスが主人公だ。ポーギーは、ベスの情夫が殺人を犯し逃亡した事をきっかけに、密かに思いを寄せていた彼女を自分の家にかくまう。しかしベスは、やがて姿を現した情夫と再び深い関係に。それでもポーギーは、ベスを守り愛し続けるも、ついに情夫と乱闘になり彼を刺殺。ポーギーが警察に連れ去られ悲しむベスだったが、かねてから彼女を口説いていた、薬物の売人の口車に乗せられNYへと旅立つ。家に戻ったポーギーはそれを知り、NYの場所も分からぬままベスの後を追うのだった……。

「ザ・ブロードウェイ・ストーリー」 VOL.8 『ポーギーとベス』は傑作か?

ガーシュウィン自身、父親がロシア、母親はベラルーシから来た移民の子であったこと、若い頃に黒人音楽に影響を受けたラグタイムに傾倒していたことなどがオペラ化に影響していたのかもしれません。

オペラ「ポーギーとベス」の最大の特徴は、ほぼすべてのキャストがアフリカ系アメリカ人(黒人)であるということです。今回の動画はオペラの一部を掲載します。

Porgy and Bess: “Summertime”

“Concerto in F”

1925年に作曲された「へ調の協奏曲」、ヘ長調で作曲されたピアノ協奏曲です。

ジャズの要素を取り入れた「ラプソディ・イン・ブルー」はオーケストレーションにグローフェの手を借りた作品でしたが、今作はガーシュウィンがオーケストレーションまで全て自身で行っています。

音楽理論を学び、自費でオーケストラの試奏を行い完成させたこの協奏曲は、ジャズとクラシックが融合したまさにガーシュウィンの魅力を最大限に表現した作品だと思います。

映画音楽のように、いろいろな情景を想像させてくれる色彩豊かでとても聴きやすい協奏曲です。5:45あたりからの、ガーシュウィンお得意のシンコペーションで軽快なリズムを刻む場面はワクワクしますね♪

また、7:30あたりからはとても優雅なメロディで、ブラームスやラフマニノフを思わせる愁いを帯びた美しい旋律です。それが、9:00からガーシュウィン節が炸裂します!リズムがとにかくおしゃれ!!このあたりからはしばらくジャズのような自由で飛んだり跳ねたりします。

一楽章の数分だけでもクラシックからジャズの両方をガーシュウィンらしいメロディで楽しめるこの作品は本当に面白い協奏曲です。

初演はニューヨークのカーネギーホールで行われ大成功を収めました。ただ、この作品がクラシックかジャズか意見が割れたそうです。私個人は、耳なじみのあるメロディーや曲の展開を感じますし、曲の表情がころころ変わる現代音楽の要素も組み込まれた正統派のクラシックだと感じます。

「火の鳥」や「春の祭典」などで有名なロシアの作曲家ストラヴィンスキーは肯定的でこの作品も褒めたそうですが、「ロメオとジュリエット」や「ピーターと狼」などで有名な同じくロシアの作曲家プロコフィエフはこの作品を毛嫌いしたと言われており、素晴らしく個性的な作品だけに評価も分かれているようです。

George Gershwin Piano Concerto in F major Wang Yuja – HD

ガーシュウィンの名曲紹介~ジャズ~

ここからは、ジャズナンバーとして有名なガーシュウィンの作品を紹介します。ほとんどの作品がオペラやミュージカルのために作曲されたものですが、すでにジャズナンバーとして定着している作品ということで、こちらで紹介します。

先日亡くなられたジャズ界の巨匠「トニー・ベネット」さんの動画を中心に紹介したいと思います。

“Swanee”

ガーシュウィンを紹介するうえで重要な曲が「スワニー」です。

1919年に作曲した作品で、発売当時はヒットせず埋もれてしまいましたが、のちに歌手のアル・ジョンソンが自らのショーで披露したところ大ヒットし、1年間で1万ドルを稼ぐ有名人となりました。

約500曲ある歌曲の中でも一番のヒットとなり、ラプソディ・イン・ブルーとともにガーシュウィンを代表する1曲です。

軽快なリズムで気分がウキウキ、つい笑顔になってしまう曲で大好きです!今回紹介する動画は、何度もミスタッチ(弾き間違え)をしています(笑)でも、曲の良さが前面に出ていて雰囲気が良く表現出来ていて、曲の魅力を最大限に表現されていると思います。

Swanee by George Gershwin

“I Got Rhythm”

「I Got Rhythm」は、1930年にガーシュウィンが作ったミュージカル「Girl Crazy」に使用された曲です。軽快なテンポと明るい曲調でとても人気のある曲です。リズムがところどころ裏拍(うらはく)になっていて、独特のテンポ感で気持ちがいいですね。

ジャズの世界では、この曲でアレンジすることを「リズムチェンジ」と呼びます。詳しい解説は下のリンクから飛んでみてください。とても詳しく解説されて、実際にコード進行が聴けるので私も大変勉強になりました。

リズムチェンジは1930年にジョージ・ガーシュインが作曲した「I Got Rhythm」を元にしたコード進行のことです。

I Got Rhythmのコード進行(Chord Changes)が徐々に省略され「I Got Rhythm Chord Changes」=「I Got Rhythm Changes」=「Rhythm Changes」=リズムチェンジと呼ばれるようになりました。

ジャムセッションなどで「リズムチェンジ」という場合はI Got Rhythmを元にしたコード進行を指します。

https://www.jazzguitarstyle.com/what-are-rhythm-changes

もともとは、1928年に発表したミュージカル「Treasure Girl」のために作られたテンポの遅い曲を作り直した作品になります。ちなみに、「Treasure Girl」にはこのあと紹介しますがジャズの名曲として今でも人気の曲が何曲もあります。やはり、クラシックとジャズの両方に魅力を発揮していますね。

Grigory Gruzman plays G. Gershwin I got rhythm

“S’Wonderful”

1927年にブロードウェイミュージカル「Fanny Face」のために作曲された作品です。

「It’s wonderful」から「It」を省略した表現で、日本語だと「スワンダフル」と呼ばれています。曲を聴いてみてもそう聴こえますね。

のちに映画化された「Fanny Face」(日本だと「パリの恋人」という名前の映画)では、主演のオードリー・ヘプバーンがフレッド・アステアと一緒に歌っています。また、ミュージカル映画「パリのアメリカ人」でもこの曲が歌われており人気の曲となっています。

明るくゆったりとした曲調と、「wonderful、marvelous、paradise、fabulous、awesome、beautiful」などなど、とてもハッピーな言葉が並んで気分のいいジャズナンバーですね♪

'S Wonderful (Live At The Tonight Show With Jimmy Fallon / 2018)

“The Man I Love”

ガーシュウィンはブロードウェイ・ミュージカルも作っており、「S’Wonderful」同様にこちらも「Fanny Face」の1曲として作曲された音楽です。

この曲は以前から知っていましたが、まさかガーシュウィンによる作品とは知らずこのブログを書きながらとても驚いています!

動画はせっかくなので、ジャズ界の巨匠・トニーベネットの歌唱をのせます。ジャズに詳しい訳ではないですが、トニー・ベネットは渋くてカッコいい声ですよねー♪歌って無くても立ち姿だけでもしびれます(笑)

'S Wonderful (Live At The Tonight Show With Jimmy Fallon / 2018)

“Embraceable You”

こちらは、1928年に作られた「East is West」という未発表オペラのために書かれた作品です。

このオペラ自身は資金難で発表出来なかったため、のちに発表された「Crazy Girl」に収録され日の目をみるところとなりました。

曲はバラードナンバーで多くのアーティストによって歌われていて、また悲しいメロディはピアノやトランペットなどのインストゥルメンタルでも演奏されている名曲です。

今回はトランペットがメロディを演奏するバージョンを載せます。ボーカル版と違い、より一層ジャズの雰囲気が出ていて気持ちがゆったりします。

Wynton Marsalis – Embraceable You – 8/19/1989 – Newport Jazz Festival (Official)

“Fascinating Rhythm”

1924年に作曲されたこの曲は、ミュージカル「Lady,Be Good」で使われました。

この曲にまつわる逸話のひとつに、ギネス記録があります。「オリジナル録音のリリースから、同じアーティストによる同じシングルの再録音までの最長期間」の記録を、なんとトニー・ベネットが持っているんです。最初が1949年で、次が2018年と、なんとその期間69年!!

この曲が長く愛されていることと共に、トニーベネットがずっと第一線で活躍していたことを証明する面白い記録ですね。

Tony Bennett, Diana Krall – Fascinating Rhythm

“Nice Work If You Can Get It”

Tony Bennett, Diana Krall – Nice Work If You Can Get It

“Love Is Here to Stay”

こちらの作品は1938年に作られました。ガーシュウィンは基本的に作曲を行い、作詞は兄のアイラ・ガーシュウィンと組んで様々な曲を作ってきました。

この作品を作曲中、ガーシュウィンは脳腫瘍により38歳の若さでこの世を去ってしまいます。作曲中の出来事に、兄アイラはさぞ落ち込んだことでしょう。

この作品は愛の深さ、偉大さをロッキー山脈やジブラルタル海峡などの雄大な自然と比較して表現しています。きっと、兄弟の絆、愛は何物にも代えがたいもの、永遠だということを伝えたかったように感じます。

動画は昨日96歳で亡くなったトニー・ベネットの歌唱を載せます。曲も演奏もとても素晴らしいです。

Tony Bennett, Diana Krall – Love Is Here To Stay

“I’ve Got a Crush on You”

こちらもジャズのスタンダードナンバーになっている曲です。

歌っているのはフランク・シナトラです。マイケル・ジャクソンやエルビス・プレスリーなどと並び20世紀のアメリカを代表するエンターテイナーです。

「crush on you」で「あなたに夢中、首ったけ」という意味になり、ストレートなラブソングですね。しぶいシナトラの声が曲をより素晴らしく感じさせてくれます。

Frank Sinatra ~ I' ve Got a Crush on You [HQ]

“Let’s Call the Whole Thing Off”

1937年の映画「shall we dance」のために作曲された作品です。

この曲はAFI(American Film Institute)アメリカ映画100年シリーズのアメリカ映画の主題歌トップ100で34位にランクインしました。

面白い歌詞で、イントネーションの違いを用いて、生まれ育った地域や国の違いで悩むことはもうやめようと歌っています。「トマト」、「ポテト」、「パジャマ」、「バニラ」などなど、聴いた事のある単語を違うイントネーションで歌っています。(「トマト」をアメリカ風に「トメィト」、イギリス風に「トマート」など)英語のリスニングの勉強に聴いてみてはいかがでしょうか(笑)

Fred Astaire & Ginger Rogers – Let's Call the Whole Thing Off (1937) [Restored]

まとめ

いかがでしたでしょうか。クラシックとジャズを融合した独自の音楽を築き上げ、アメリカを代表する作曲家ジョージ・ガーシュウィン。

クラシックに馴染みがない方にも聴きやすい音楽がたくさんあるので、是非今回紹介した曲を聴いてガーシュウィンに触れてみては如何でしょうか♪

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